蛇足。後日談の更なる補足というかなんというか。














〜勇者アラインが敵味方無視で訪ねる不愉快な旅の仲間たち〜



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「…というわけで連載後の定番になっている蛇足だけど、今回は僕が回らせてもらうことになったのでよろしく、みんな」
「ちなみにクランツ騎士団を連載していた際は主人公のシャナル・シャール氏と謎の冒険者ナーオ・ナーホ氏が登場人物を訪ねつつ裏設定を暴露したり余計な設定を捏造したりして本編を補完してたらしいっす」
「補足説明助かるよ、マハト。みんなも今のでこの蛇足の趣旨を理解してもらえたかな?」
「ところでさっきからどこ向いて話してるんすかアライン様」
「近くて遠いあの画面の向こうさ、マハト」
「画面の向こう…?アライン様、性格だけじゃなく言動まで弾けちまったんすかね?帰還してからずっと頭のネジ2、3本ぶっ飛んでますよね?」
「ははは、失礼な奴だな。僕は豆腐メンタルを卒業して華麗に生まれ変わったんだ。そうしたらモテてモテて自然にこうなっていたというだけだよ」
「完ッ全に調子こいてますね?後日談の後ちょっと反省したんじゃないんですか?ベルクに比べて僕まだまだだなーとか言ってませんでした?」
「うん、ベルクの近くにいると身が引き締まるよね。でも逆に言うとベルクの近くにいないとフワフワしっぱなしだよね。だってもー毎日楽しくって!!!アハハ!!!夜会に出れば引っ張りだこだしバルコニーで佇んでいれば兵士にサイン求められるし街で買い物なんかしようものならお代なんか結構です!なんならウチの娘も貰ってやってくださいなんてアハハハハハ」
「わぁー!!!!アライン様がモテ期の魔力に壊れてるーーー!!!!!!!ちょ、落ち着いてください。4話で名前だけ出てきてた麗しのイヴォンヌ姫と婚約したんでしょう!?モテ自慢なんかしちゃっていいんすか!!?」
「いいんだよー姫も毎日モテ自慢してくるから。アライン様と婚約した後の方があたくしに言い寄る殿方たちの眼が真剣ですのよウフフって!!!」
「アライン様…俺が言うのもなんなんすけどそんなフィアンセでいいんすか…?アライン様にはもっとこう清楚で可憐な女の子が似合うんじゃないかと思うんすけど…」
「清楚で可憐はお前の趣味だろマハト。あの後いっぱい見合いの話きてたのにほとんど断ってたじゃないか。会うだけ会ってみるって言ってたのも全部ゲシュタルト似のおとなしそうな子ばっかりでさぁ」
「わー!!!!お、俺の話はいいんですってば!!!!」
「いや、蛇足ってそういうことを喋るコーナーだから潔く諦めろ。僕がゲシュタルトと似ていることを指摘すると結局全部破談になるとかこのままじゃ独身街道一直線だとかこんなマハトとお友達から始めてくれる女性の方募集中でーすとか喋らせろ」
「全部口に出してるじゃないですかあああ!!!!」
「でもお前登場人物中唯一の三十路だし、本当に早いとこ結婚したほうがいいと思うぞ。BLフラグが立っても僕知らないからな」
「え…っ?立つんすか…?」
「当たり前だろ立つよ。女っ気のない世話好きの戦士って時点で発狂しそうってこないだ女官に借りた薄い本の後書きに載ってたぞ」
「何読んでるんすかアライン様アアアアアアアアアアア!!!!!」
「や、メリアとかエルゼが主従萌えーって廊下で盛り上がってて…なんか貸してくれるって言うから…」
「あれでしょ!?巷で出回ってる事実無根の俺とアライン様のサイドストーリーみたいなヤツでしょ!!?あれうっかりエーデルとディアマントが読んだらしくて最近俺にすげー冷たいんすからねあのふたり!!!」
「あ、赤色のシールがついてる本?僕まだ18歳じゃないから読んじゃ駄目らしいんだよなー」
「絶対読まないでください!!!!っていうか取り締まってくださいよ!!!!!!!!」
「なんで?みんな楽しんでるんだから別にいいじゃないか」
「う…うう…でも現に俺が迷惑して……」
「じゃあ注意書きの徹底を呼び掛けておこうか。けど僕イヴォンヌ姫との婚約発表したのになんで下火にならないんだろうな?」
「さあ…妄想逞しいんじゃないすか……」
「やっぱりお前が結婚してないからじゃないかなー。…ってあれ?なんかグッタリしてる?」
「ええちょっと…妙な疲労感が……」
「僕が看病してやろうか?メリアとエルゼに話すネタにもなるし」
「!!?下火にならない理由が今わかりましたよ俺は…!!!!」



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「というわけで次はベルクたちのところへやって来たよ」
「うわ!びっくりした!お前来るなら予告しとけよアライン…」
「転移魔法って便利ですのねぇ」
「やあご両人、まだ言ってなかったけど婚約おめでとう!」
「ッ…」
「ありがとうございますですわ!」
「わぁベルクが貝だ。こういう話題本当に苦手だよね、ククク」
「笑ってんじゃねえ!!ったくもう…」
「と言いつつ自然な仕草で立ち去ろうとするのはやめよう?さ、ベルク座って座って」
「兵士の城だぞここ!!なんでお前が仕切ってんだ!!!」
「ちなみにウェヌスはなんて言ってプロポーズされたの?」
「だーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
「まあ、すみませんアラインさん。ベルクから他の人に話してはいけないと言われておりますの」
「えー?そうなんだ?盗聴魔法でも仕掛けておけば良かったかなあ」
「ア・ラ・イ・ン…!!!」
「わぁベルク、バーサーカーみたい」
「からかいに来ただけだったら帰れ!お前だんだんノーティッツみたいになってきてんぞ!?」
「やだなあ僕はあそこまで頭脳派じゃないよ。それに知略を尽くして敵を倒すより圧倒的なパワーを見せつけて勝利する方がずっと好きだし」
「お前は何を言っているんだ」
「まぁアラインさん、とってもいい笑顔ですわ!」
「そういえば今日は陛下やお兄さんたちは?」
「ああ、なんか毎月15日は賊狩りの日とか言って周辺の取り締まりに行ってると思う。今回は俺が留守番なんだ」
「相変わらずアグレッシブな国だなあ。ウェヌスはどうなの?馴染んできた?」
「ええ、おかげさまで毎日とっても楽しく暮らしております!先日ついに私も社交界デビューをいたしまして、ベルクのリードでワルツを」
「ええええ!!?そ、そんなことが!!!?」
「馬鹿!余計なことべらべら喋ってんじゃねえ!!」
「今思い出しても素敵な一夜でしたわ…。優美な旋律に合わせて弾む足、繰り出される拳、剣と剣のぶつかる激しい音…」
「ちょっと待って、兵士の国ってどういう夜会開いてるの?」
「夜会じゃねえよ。大規模模擬戦夜間の部だよ。アホ親父がウェヌスみたいな若い女の子が見に来てくれるんならってBGMだけは花のワルツにしやがったんだよ…」
「たまに前衛的なセンスしてるよな兵士の国」
「あっという間に百人斬りを達成してしまって…ベルクはやっぱり私の選んだ最高の殿方です。雄々しく、力強く、勇猛果敢で!ああ!ベルク、私の勇者!!」
「あれっトランス状態に入っちゃった?」
「気分が盛り上がりすぎると戻って来ねえんだよこの馬鹿女…」
「と言いつつも口元は嬉しそうだねえ」
「ばっ…!!!!」
「幸せそうで何よりだよ。ベルクには余計なフラグの立つ心配がなくて良かったな」
「余計なフラグ…?なんだそりゃ?」
「ううん、こっちの話」



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「こんにちはー。お兄さん、生姜焼き定食ひとつ」
「いらっしゃい…ってアラインじゃないか。お城寄った帰り?」
「帰りというか蛇足という名の旅の途中なんだノーティッツ」
「ふーん?よくわからないけど仕事中?お疲れさま、まあお冷でも」
「ごくごく…ふぅ、生き返るなあ」
「そう言えばアラインの婚約相手、イヴォンヌって名前なんだね。おめでたいニュースなのに耳にするたび複雑な気分になるよ」
「え?なんで?」
「いや、うちの母さんと同じ名前でさ…」
「そうなんだ!?へえー偶然だね」
「偶然かなあ、偶然じゃない気もするなあ!」
「なんか王妃様が昔お世話になった女魔導師の名前から頂戴したらしいけど」
「やっぱり確定か…!!!」
「何?どうしたの?」
「いや、なんでもないんだ。親の過去がちょっぴり気になるだけなんだ」
「???まあその話聞いたとき、王様は妙に苦い顔してたかな」
「苦い顔!?あ…あのひと一体隣国で何をしたんだ…?」
「イヴォンヌなんて名付けたらロクな女に育たんと反対したのに…ってぶつぶつ呟いてた。僕は姫のこと小さい頃から知ってるし、見た目も中身も好きだけど」
「どんな子なの?聞きたいなー!宮廷情報では凄い美人らしいね?」
「うん、イヴォンヌ姫は美人だし、自分が綺麗だってことを誰よりもわかってるよ。国民の求める小鳥のような王女像を見事に演じきるその姿は僕でさえ魅了させられる…」
「あ、なんだろうアライン…ぼくデジャヴを感じてきた」
「社交界での男あしらいなんか超のつく一級品だね。清楚と可憐の仮面をつけて、遊び終わったら後引くことなく幕を下ろす…しかもそれが美しい思い出として男の心にいつまでも残り続けるんだ。凄い恋愛技術だよ。心から尊敬するよ」
「アライン?おーい?」
「でもそんな彼女も僕の前では素を出すことが多いんだ。よくふたりで魅力的に映る笑顔の角度なんか研究したっけ。同い年で同じセレモニーに出ることもしょっちゅうだったし、後で点数をつけ合ったりして」
「うん、とりあえず似た者同士なんだってことはわかった」
「え?似た者?アハハまさか!僕は姫みたいな面倒くさい性格してないよー」
「アライン……」
「まあ胸とお尻の大きいちょっとワガママで手のかかる女の子がタイプだからどストライクなんだけどね!」
「!!?胸とお尻の大きいちょっとワガママで手のかかる女の子…!!?」
「どうしたんだノーティッツ?」
「アライン、君とは気が合いそうだ」
「ノーティッツ…!!!」
※熱く握手を交わしています。しばらくお待ちください。
「けど意外だったな。君は山門の村の女の子とフラグが立ったものだと思ってたから」
「ああ、シュトラーセ?うーん美人は美人だったけど彼女はどちらかというとマハト向けかな」
「へえ、マハトさんああいう子が好きなの?」
「そうそう!神聖な感じの子に弱くてさー。一途そうで、無口そうで、何があっても生涯あなたに尽くします系の」
「へえー、なんかヒルンヒルトさんみたいだね」
「えっ…!?」
「えっ?ヒルンヒルトさんみたいじゃない?天界では吹っ切れてたけど、寡黙だしアンザーツのためなら何でもやりますって感じだったし」
「ノーティッツ…君は今立ててはいけないフラグを立ててしまったんじゃないか…?」
「えっ!?」
「どうしてくれるんだ…!僕はネタを仕入れたら話さずにはいられない性格なのに…!!許せマハト…!!」
「なんで泣いてるのかわからないけど君また間違った方向に突き進もうとしてるだろアライン!!!」



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「ショックのあまり屋敷へ帰ってきてしまった…」
「おい、邪魔だ小僧」
「小僧って、1つ2つしか違わないのにディアマント…」
「私を”相変わらず老けてるなー”みたいな目で見るのはやめろ」
「仕方ないよ、実際老けてるんだし」
「おい」
「某さんからはオーバストよりディアマントの方が年上に見えるとまで言われてたし」
「誰だその某さんというのは」
「画面の向こうにいる人だよ」
「画面?何を言っているのだ貴様は」
「あ、そうだ眉間に皺が寄ってるせいで年齢より上に見られちゃうんじゃないか?ディアマントもクラウディアみたいにいつもニコニコしてれば年相応に見えるかもしれないぞ!」
「なんっで私があの愚弟の真似事をせねばならんのだ!!!!!!!!!!」
「ええー、いいじゃないか一度くらいとびっきりのスマイル見てみたいよ!!」
「断る」
「ええー!!見たい見たいー!!!」
「面白いこともないのに笑えるか!!!」
「………。好意で……ずっと……屋敷の部屋を提供しているのに……」
「……!?」
「飲食店なら……貨幣なんてひとつも払わず……貰えるのがスマイルなのに……」
「……。卑怯だぞ貴様…」
「そうさ、僕はいま勇者として大切な何かを失ったんだ。その代償として笑って見せてくれよディアマント!」
「貴様が勝手に失くしたのだろうが!!!」
「頼むよ!見られないとわかると尚更見たくなってきたんだ!!今夜クラウディアとバールを連れて天界に遊びに行ってくるから!!エーデルとふたりきりにしてあげるから!!!」
「……ッ!!」
「な?それならいいだろ?な?」
「…………………(ニコッ)」


















「ディアマント…笑うの下手だね……」
「叩き斬るぞ貴様…!!」



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「ディアマントに怒られて不貞寝してるうちに謎の空間へやってきてしまった。うーんここはどこだろう?」
「あ、こんにちはアライン殿!」
「あれ、オーバストさん」
「…ふん」
「それにツエントルムも…。ということは僕はまだ眠ってるんだな」
「蛇足の旅をしておられると聞きましたよ。連載が終わった後もご苦労様です」
「いやいや、皆に会いに行くのは結構楽しいからね」
「わたしの見たところ人物紹介ページの登場順に回っているらしいな。次は魔王親子か」
「あ、そうなんだ。適当に出してきていると見せかけて実はそんな法則が」
「蛇足と言えば裏設定流出ですが、我々の場合番外編も書いてもらったのであまりお話しすることはないかもしれませんね」
「死んでしまったからその後どうしたもこうしたもないしな」
「え、でもオバツエのふたりには個人的に聞きたいことが割とたくさんあるんだけど」
「…何故そう略した」
「え、ツエオバだった?ごめん僕もその辺の機微には疎くて」
「いや、オバツエだろうがツエオバだろうがやましいことなど何もないから関係ない。…ではなくて!」
「あ、やましいことないんだ。僕てっきり今では相思相愛なのかと」
「??双子ですからね、思い合ってはいますよ?」
「オーバスト、お前はちょっと黙っていろ。おい貴様、我々の間柄を汚すような発言は許さんぞ」
「ベルクの相方発言は喜んでたくせに…もしかしてツエントルムって意外と潔癖症?」
「あ!そうなんですよ、わかります?アライン殿」
「わかるわかる。ディアマントと同じで女慣れしてない感じだよねー」
「女性に接する機会がほとんどありませんでしたからね!不必要な男女のイチャイチャなんか大嫌いなんですよ実は」
「おい、何を好き勝手に話している」
「黄泉の国でも親しげな恋人同士や友人同士を見かけるとすぐ爆発しろ爆発しろと」
「アハハ、長いことぼっちだったから」
「おい!!!」
「まぁそんなところも今となってはちょっと可愛いかなーと」
「オーバストさんデレデレだね。ヒューヒュー」
「…っ!!」
「あれ?ツエントルム?どうしてそっち向いてるんだ?」
「う、うるさい」
「私また余計なこと言ったかな?ごめん、気をつけるよ」
「あーうるさいうるさい!」
「(オーバストさんの怖いところはここまでやっておきながら当人はノーマルってとこだよなあ…)」



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「双子がふたりの世界を構築し出したからそっと抜けてきたけど…うーん僕まだ目覚める気配ないな」
「おお、勇者の片割れではないか」
「あ、魔王さん。ということはイデアールもこの辺に?」
「いやあれはもう生まれ変わった」
「早ッ!!…え、てことは彼は蛇足では出番なし?」
「そういうことになるな。まあ魔王なのに本編ではほぼ出番のなかった私に譲ってくれたということでひとつどうだろう?」
「あ、やっぱりそこ気にしてたんだ」
「まぁ設定上仕方なかったとは言えど…せめて百年前の回想シーンではもっと登場したかった…」
「あ、あはは…」
「後日談でユーニを出すからひとまとめに語ってしまおうというやり方がセコいと思わんか!?なあ勇者よ!!」
「そ、そうかもしれませんねー」
「私と大人ユーニの甘酸っぱい青春とかをもっとこう…!!もっとちゃんとした形でだな…!!!」
「(どうしよう、祖父の長話に付き合わされる孫の気分になってきた…)」
「今からでも番外編書いてくれんかのー。やっぱりもう駄目かのー」
「書く気になればいつでも書くとは思うけど、もし悲劇要素のないただのリア充だったなら可能性は低いんじゃ?」
「…なん…だと…」
「……リア充だったんです?」
「私とユーニは毎日のよう城で愛を語り合い、絆を育み、神具や神についての研究を重ね」
「あ、盛り上がるとこなさそうだなそれ」
「何故だ!盛り上がらないならほのぼのを書けばいいだろう!!」
「うーん、昨今のほのぼの魔王ブームでそういうの食傷気味なんで難しいような…。寧ろ僕はGカップのほうが気になるけど」
「おぬし俗っぽい勇者だのー」
「大きな胸には夢とロマンが詰まってるんだよ…!!」
「アンザーツは乳房に興味などなかったぞ?」
「いいんだ彼は。アンザーツが胸の形やサイズについてベラベラ喋り出したら僕また自分の憧憬と向き合わなきゃいけなくなるし」
「おぬしややこしそうな内面しとるのー」



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「胸の話をしたら女性キャラに会いたくなったので目覚めとともに天界へやってきた僕だった」
「なんで語り口調なの?悪いけどいま私しか手があいてないわよ」
「いいんだよゲシュタルト、ゲシュタルトに会いに来たんだから。…でも一応聞いておくけどアンザーツとヒルンヒルトはどこ行ったんだ?」
「さあ?奥の部屋じゃない?」
「奥の部屋?何してるんだろう?」
「…チェスか、ポーカーか、オセロか、それ以外よ」
「それ以外?」
「…私そろそろ悪魔払いの魔法を身につけるべきかしら…」
「悪魔!?悪霊じゃなく!?あ、あのふたりとまた何かあったのか!?」
「ああああどうせ生き残るならアンザーツとふたりきりで生き残りたかったーーー!!!!!!!」
「落ち着いてゲシュタルト!ゲシュタルトもヒルンヒルトも死んでるから!!」
「だっておかしいじゃない!!ここは天界なのよ!?本来アダムとイブがいるべきところをどうしてアダムとアダムとイブなんてメンツになってしまったの!?おまけに3人じゃ麻雀もできないわ!!!」
「麻雀!!?う、打つのか?ゲシュタルトが?」
「何よ、打つわよ麻雀くらい」
「…マハトが知ったら驚きそうだな…」
「3人でやってあれほど詰まらないゲームはないわね。そうだ、アラインあなた後でまたおいでなさい。私たちと遊びましょう」
「…天界って本当に暇なんだね?」
「激しく暇よ。やっぱり野菜か何か育てようかしら」
「ちなみにゲシュタルトのすくすく育った胸は何カップなのかな?」
「私はDの…ってちょっと待ちなさい。今あなた私に何を聞いたの?」
「え、胸のサイズを」
「あ、あ、あなた清らかな顔して女の子になんてこと……ッ!!!!!」
「ええ!?ゲシュタルトまさかの純情路線!!?ベルクだってシモネタくらいなら平然とついてくるのに…!!!!」
「世界を救った勇者がそんないかがわしいこと口走るなんてきっと悪魔にとりつかれてるのね!?私の可愛い子孫、私が救ってあげるわ!!ちょっと痛いけど我慢なさい!!!」
「わああああああ!!!!さ、さようならー!!!!!!」



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「あーびっくりした…。ゲシュタルトってちょっと思い込み激しいよな…」
「おや、アラインさんお出掛けでしたか?」
「あらアラインじゃない。今日も焼き立てパンのお土産があるわよ」
「クラウディア、エーデル!ふたりとも仕事は終わったのかい?」
「ええ、今帰るところです」
「待ち合わせして毎日デートしながら帰るのよね、あたしたち」
「ふふふ」
「うふふ」
「…へえ、仲良いね…」
「今夜もふたりで星を見に行く約束なのよ」
「楽しみですね、エーデル」
「あっ」
「?どうしましたかアラインさん?」
「いや、悪いんだけどクラウディアには夜頼みたいことがあってさ…」
「私にですか?一体なんです?」
「ちょっとね、天界まで一緒に来てくれないかなって」
「あたしは構わないわよクラウディア、星はいつでも見れるもの」
「そうですか?すみません、では天界へはエーデルと一緒に」
「いや、ディアマントひとりに留守番させるのちょっと怖いからエーデルには残ってほしいかなーなんて…」
「えっ」
「…何か裏交渉の臭いを感じるんですが、アラインさん?」
「い、いや実は…ボソボソボソ…こういう次第でディアマントの笑顔が見たくてつい…」
「………」
「どうしたのふたりとも?何ひそひそ話してるの?」
「…やっぱり怒った?クラウディア?」
「いえ、わたしも彼の不気味な笑みをひと目見たかったなと」
「じゃあ今度クラウディアのいるときに笑わせてみせるから、今回はこの通り!」
「アラインさん、無駄な処世術が身についてきたのではないですか?」
「えへへ…」
「何よふたりとも!あたしの前で内緒話!?」
「すみませんエーデル、ちょっと男同士の話があって」
「ご、ごめんねエーデル」
「男同士…!!?そ、それってアラインがこの間お城の女の子から借りてきた大きくて薄い本に載ってたような話じゃないわよね…!!?」
「違います」
「そうよね!!!クラウディアがそんなはずないわよね!!!あー良かった。びっくりした〜」
「わたしがあんな風に汚れているわけないじゃないですか。マハトさんじゃあるまいし」
「うんうん、そうよね。世の中がどんなに荒んでもクラウディアだけは清廉潔白だって、あたし信じてるわ」
「エーデル…」
「クラウディア…!」
「ちょ、こんな街中で!!人が見てるよ!!!ふたりとも!!!」
「はっ、そうだったわ。やだあたしったら恥ずかしい!」
「エーデルはお茶目さんですね」
「駄目だこのバカップル…早く何とかしないと…」



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「…ハッ!ここは?確か僕はあの後、そういえばふたりってどこまで進展してるの?と尋ねて真っ赤になったエーデルに痛恨の一撃をもらったような…」
「おやおやどなたかと思えばアライン君ではないですか。臨死体験ですか?勇者も怪我が絶えませんねえ」
「うわ!ハルムロース!!」
「はっはっは、オマケのオマケの蛇足ですから今回は何もしませんよ。ちょっとでも暴れたらすぐ魔王が飛んできて拳骨食らわせてくるんです。やってられませんよね」
「あ、そうなんだ?ハルムロースもさあ、結構強いんだからちゃんと反省して生まれ変わって今度はいい人生歩みな…」
「なんて言うと思ったかー!!!!わははは実は俺でしたーーー!!!!!部分変化キーック!!!!!!!!!」
「あ!とっぽい方のオールバック!!!お前リッペか!!!」
「ギャアアアアアア!!!オリハルコンから光がーーー!!!!光がーーーーー!!!!!!」
「反省する気ゼロだなお前!えい、浄化してやる!!」
「いやああああやめてえええええええええええ!!!!!!!!」
「何をやっているんですかアライン君、リッペ君」
「あ!今度は本物のハルムロース」
「ひぎゃああああハルムロース様助けてくださいいいいいい!!!!!」
「まったく世話の焼ける部下ですねえ君は。仕方ありません、ここは私がひと肌脱いで……なんて言うと思ったかー!!!!食われた痛み思い知れーーーー!!!!!!!!!!!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
「…というやりとりを後日談の中に入れたかったけど入れられなかった?なんだろうこのメッセージ性の高い立て札は…」



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「そんなこんなで夜が来たので、クラウディアたちを連れた僕は天界へ戻ってきたのだった」
「何故語り口調なんだ?」
「久しぶりだねアライン君」
「ヒルンヒルト、アンザーツ、昼間も僕来てたんだよ?」
「あ、そうなんだ。ごめんねちょっと篭ってたから」
「チェスしてたの?ポーカーしてたの?オセロしてたの?それ以外のことしてたの?」
「それ以外だが何か」
「うっ…なんだこのヒルンヒルトから感じる威圧感のようなものは…!」
「にしても、蛇足の旅なんだって?みんなとはどんな話をしたのかな」
「ええっと…まあ、フラグの話とかカノジョの話とか腐った話とかを」
「ほう、腐った話」
「あ、なんかヒルンヒルトの食いつきが凄い。爆弾ほうった気がする」
「ひとついい裏話を教えてやろう。グダグダ喋っているだけでも蛇足らしいが、やはり零れ話を零してナンボだからな」
「わっなんだろう?同席者がアンザーツだけだからツッコミ面弱いけど聞きたいな」
「ぼくだとツッコミ弱いの?」
「だってアンザーツは…ド天然じゃないか…」
「え!?そ、そうかなぁ」
「…登場人物紹介のイラストが置いてあるだろう?各自膝上くらいまでは映った」
「あ、うん、置いてるね。あれがどうかした?」
「ヒルトの紹介絵だけちょっと豪華だよね。あれは何かの魔法を放ってるところ?」

「いや、あれは魔法ではない」
「ええっ!?魔法じゃなきゃあの浮遊物体はなんなんだ!?」
「聞いて驚け、あれがかの有名な…」
「かの有名な…!?」
「BL臭―――またの名を『うわぁこいつほもくせえ』だ」
「な、なんだってー!!?」
「へえーあれってそういう名前だったんだー」
「BL臭って可視化できるんだ!?というか自分で認めていいのか?一連のヒルンヒルトの行動がもうそういう風にしか見れなくなるんだけど…!」
「ま、困りはしない」
「…こう、割と自由だよな、ヒルンヒルトって…」
「2年前に途中まで書き溜めていた分はもっと強烈にヒルアンだったと聞く」
「僕17歳なんだけどそれ聞いてもいい話?」
「ま、やめておけ」
「1周回ってひとまず友情に落ち着いたんだよね、ヒルト」
「本編の間はな」
「わあ…不穏だけど今日はツッコミが不在だなぁ。今度もしドサ回りすることがあったら絶対ベルクと来ようっと…」
「彼は嫌がると思うぞ」
「うん、ベルクはこういうの嫌いそう」
「でも本来僕らダブル主人公だし、来れるなら来てもらわないと」
「あ、ダブルだったんだ!どう見ても後半はアライン君がチート化してたからてっきり…」
「成程、それで後日談が取ってつけたように彼の話だったわけか」
「よくできてるねー」
「えー、没設定に興味がある方は拍手等でメッセージをくださればどこかにアップされるかもしれません。……ところで昼間、奥の部屋で本当に何してたんだ?」
「ん?別にただの掃除だよ」
「掃除?あ、なんだ良かった。変なこと想像しちゃってた」
「ふたりでかなり散らかしてしまったからな」
「毎回後が大変だよねえ」
「……んっ?」



***************



「イデアールさまが帰ってくるまであとどれくらいかなぁ」
「やあユーニ、元気にしてた?」
「あ、アラインだ!うん、ボク元気だよ。みてみて、中庭に花壇をつくったの」
「おおこれはすごい。白い花がたくさん咲いてるなあ」
「イデアールさま、このお花すきだったんだ。だからいっぱいにしておくの!」
「ユーニ…!ああ、幼女は癒されるなあ!また寂しくないようにエーデルに遊びに来てもらうから!ね!」
「うん、ボク、エーデルすき!とってもやさしいんだよ!」
「世界平和のために戦ったと自負してるけど、ユーニと会うときだけは心に何か突き刺さるものがある…」
「どうしたの?アライン?」
「いや、なんでもないんだ。元気に過ごして、早く元通りのGカップになれるといいね」
「G??」
「そう、Gだよ」
「よくわからないけどボクがんばる!」
「あ、そういえばファルシュに聞いたんだけどイデアールがもう生まれ変わってるんだって」
「!!!」
「もしかしたら案外すぐ側にいるかも―――ってなんだこのトカゲ。背中に鏡の破片が埋まってる」
「!その子はこのあいだともだちになったトカゲの子なの!足が速くってかしこいから、誰かが魔力をあげたらボクみたいに喋れるようになるかも!」
「…ふうん?帰ったらエーデルに話しておくよ」
「うん!」
「じゃあユーニ、また」
「またね、アライン!!」



***************



「…よし、これで大体の登場人物は巡ったかな。蛇足って案外疲れるなあ」
「ちょお待て待て、なんや忘れてへんか?」
「あっ!バールにラウダ!…人物紹介ページにいなかったからつい」
「くうッ…作者に鳥が描けへんせいでワシらは…!!!」
「そう嘆くな。我々は油断するとすぐ空気になっていたのだから仕方あるまい」
「あ、自覚あったんだラウダ」
「ああ…神鳥の番外編こそ最後にひとつやってほしいところだ…」
「せやんなあ!ワシらの友情物語かて書いてほしいわなあ!!」
「ところで僕ずっと気になってたんだけど、なんでバールは関西弁なの?しかもオオサカやらキョウトやら広範囲で混ざってるよね?」
「…!!!そ、それは…!!!」
「思い出していなくても思い出した体にしておけばいいと思うぞ、バール」
「簡単に言うとやな、元あった世界の地方語やねん。ワシ王都には上京してきたさかい。言葉のことではよぉ苛められたわ」
「へえー、ちなみに人間のときはどんな容姿だったの?」
「そらジブン、ワシはめっちゃイケメンで長身の…」
「バールはベルクに似た吊り目三白眼で、そばかすのツンツン頭だ。背は平均より小さかったんじゃないか?俺は褐色肌に長い黒髪だったな。こいつより頭ひとつ半は背が高かった」
「ちょおおお!?なんで勝手にバラすん!!?30秒くらい夢見させてやああああ!!!!」
「ふ、ふーん。ふたりは元々友達だったのか?」
「どうもそうらしいな。全く覚えていないが」
「覚えてないっちゅーか書いた奴がなんも考えてへんの方が正しないか?」
「それは言えている」
「あ、そうだね。割と細部適当だもんねこの連載。一番曖昧なのが魔法の威力とか難しさだけど」
「ホンマやで!よぉこんな適当で最後まで書ききったわ」
「想像力で補いながら付いて来てくれた人間には感謝を禁じ得ない…」
「ちゅーわけで蛇足もそろそろ終わりやな。ほなアライン、ワシらもう帰ろか。天界で徹マンすんのやろ?」
「あの馬鹿どもはまたそんなことをやっているのか…?」
「結構楽しそうにやってるみたいだよ、アンザーツたち。ラウダも今度遊びに行ったら?」
「考えておく」
「そんなんゆーてアンザーツらのこと大好きなくせに。いややわームッツリは」
「………」
「…ちょ…ちょお…ムッツリゆうたくらいで怒んなや…」
「別に怒ってなどいないが?」
「長生きしとるわりに沸点低いのお…」
「それバールには言われたくないと思うぞ!?」






というわけで今度こそ本当に(完)
長々とお付き合いくださりありがとうございました!








(20120716)